1杯のワインが骨粗しょう症を防ぐ

骨粗しょう症は一般に、高齢女性の発症リスクが高くなる。それは、閉経後、骨芽細胞を活発にする女性ホルモンである「エストロゲン」が減少するためだ。
骨粗しょう症は、骨の代謝バランスが崩れ、もろくなった状態をさす。骨は、骨芽細胞によって骨形成されると同時に、破骨細胞によって骨吸収され、常に新しくつくりなおされている。

通常は新たな骨形成と骨吸収のバランスが保たれているが、これが崩れて骨吸収が上回った状態が続くと、骨量が減少する。その結果骨がもろくなり、容易に骨折するような状態になるのが骨粗しょう症だ。

米ボストン大学医療センターの研究チームが発表した閉経後女性40人を対象とした研究で、適度なアルコール摂取は骨吸収のスピードをゆるめ、結果として骨量の減少を防ぎ、骨粗しょう症の予防効果をもつことが示された。

対象者の平均年齢は56歳、いずれも健常な状態であり、飲酒習慣のある女性だった。実験では対象者に14日間、禁酒するよう指示し、そして再び摂取を開始させた。

研究開始時点と、禁酒期間終了後、アルコール再開後の3回にわたり採血検査を行い、骨形成と骨吸収のマーカーである「オステオカルシン」や「C末端テロペプチド」などを測定した。これらは骨代謝と密接な関係があり、血中濃度を測定することで、骨の代謝異常を知ることができる。

実験の結果、開始時点と禁酒期間の終了時点に比べ、アルコール摂取を再開した後は、検査値が有意に改善していた。

この結果からすると、アルコール摂取習慣により、骨吸収を遅延させる効果があるといえそうだ。摂取したアルコール量は、1日あたり19gとされた。これは、ビールは中びん1本(500mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワインなら1杯(180mL)に相当する。

研究者らは、「アルコールについては、適量であれば骨を強くして、骨粗しょう症を予防する効果があるという説は以前から有力だった」とに述べている。ただし、アルコールには利尿作用があるため、体内に吸収されたカルシウムが、必要な分まで排泄されてしまうこともあるので、「飲みすぎはよくない」と指摘している。

「骨粗しょう症を予防するために、骨を形成するカルシウムやマグネシウム、カルシウムの吸収に必要なビタミンDなどのビタミンをバランスよくとることが大切だ」としている。

Mechanisms for a beneficial effect of moderate alcohol consumption on osteoporosis in women(ボストン大学医療センター 2012年8月1日)