1日にビール中瓶1本を過ぎると脳卒中リスクは上昇

「虚血性脳卒中」は、動脈が詰まって脳に十分な血液が供給されなくなることで生じる脳梗塞。通常は血栓や、動脈硬化で生じた脂肪の沈着物(プラーク)が、脳の動脈に詰まることで発症する。「出血性脳卒中」は、脳の血管が破れて出血することで発症する脳卒中。高血圧の状態が長く続くと、血管が破れやすくなり、脳出血が起こりやすくなる。
米国脳卒中学会(ASA)によると、脳卒中の約87%は虚血性脳卒中、残りの約13%は出血性脳卒中だ。過度の飲酒は、その両方のリスクを高めるという調査結果が、医学誌「BMC Medicine」に発表された。
少量または適量の飲酒は虚血性脳卒中リスクを下げる可能性があるが、大量の飲酒は虚血性脳卒中と出血性脳卒中の両方のリスクを高めるという。「脳卒中の予防の観点から、アルコールは1日に1~2ドリンクまでに抑えた方が良い」と、調査を行ったスウェーデンのカロリンスカ研究所准教授のスザンナ ラルソン氏は言う。
ラルソン氏らは、飲酒と脳卒中発症の関連を調べた25件の研究調査と、スウェーデンで実施された2件の大規模調査の結果を解析。1万8,289例の虚血性心疾患、2,299例の脳内出血、1,164例のクモ膜下出血について、アルコールとの関連を調べた。
飲酒量の程度は、軽度(1日1ドリンク未満)、中度(1日1~2ドリンク)、高度(1日2~4ドリンク)、重度(1日4ドリンク以上)として比較した。飲酒量を純アルコールに換算して分かりやすく表示する基準となるのが「ドリンク」で、国際的には1ドリンク = アルコール10gという基準量が使用されている。

肥満と過体重も肝臓がんの原因に

肥満と過体重と肝臓がんとの関係も明らかになった。肥満・過体重により肝臓がんリスクは増加し、身長と体重から算出される肥満指数(BMI)が5増えるごとに、肝臓がんの発症が30%増えるという。
アルコールが原因となる肝臓障害のなかで、もっとも多いのが「脂肪肝」だ。アルコールをとりすぎると、脂肪酸から中性脂肪が大量に合成されて肝臓の細胞に蓄積されるため、脂肪肝が起こりやすくなる。余分な中性脂肪はさらに血液中にも流れ込み、高脂血症や動脈硬化の原因になる。

また、コーヒーを飲むことで、肝臓がんのリスクが1日1杯あたり、男性で14%低下するという結果が示された。ただし、性別で分析すると、女性では統計学的に有意といえるほどのリスク低下はみられなかった。

さらに、シリアル、スパイス、ピーナッツ、ピスタチオ、ブラジルナット、チリ、黒コショウ、乾燥果実などに付着することのあるカビの一種「アフラトキシン」は、肝臓がんのリスクを増やすので注意が必要だ。

アルコール摂取量が10g増えるごとに肝臓がんリスクは4%上昇

2012年の調査によると、世界で肝臓がんが原因で死亡した人は74万6,000人に上る。部位別にみると、肝臓がんは2番目に多い。
WCRFは報告書の策定にあたり、世界の肝臓がんに関する34件の研究を解析した。対象となったのは、2万4,600人の肝臓がん患者を含む815万3,000人の男女。

それによると、1日3ドリンク以上の飲酒をすると、肝臓がんを発症するリスクは上昇する。また、アルコールの摂取量が10g増えるごとに、肝臓がんのリスクは4%ずつ上昇していく。

飲酒量をアルコールに換算して分かりやすく表示する方法が多くの国で行われている。その基準となるのが「ドリンク」で、1ドリンクはアルコール換算で10gになる。

アルコールによる肝臓がんのリスクを減らすために、安全な飲酒量を、1日に男性は2ドリンクまで、女性は1ドリンクまでと定めている。それ以上飲むと、肝臓がんのリスクは上昇する。

2~3ドリンクの飲酒量は、アルコール度数5%のビールや発泡酒であれば500mL(中ビン・ロング缶1本)、12%のワインなら200mL(ワイングラス2杯)、15%の日本酒なら180mL(1合)に相当する。

一般に女性は男性に比べてアルコール分解能力が低いので、女性の飲酒量は男性の2分の1から3分の2程度を推奨している。

動脈硬化の軽減効果を2型糖尿病患者でも確認

赤ワインに含まれるレスベラトロールには、2型糖尿病患者の動脈硬化を軽減する効果があることも明らかになった。これは米国腎臓病学会(AHA)のサイエンス セッションで発表された研究だ。
「レスベラトロールは、2型糖尿病の患者さんにおいても、大動脈の構造変化を促し、血管の弛緩を減少させ動脈硬化を改善することが分かりました。これは、特に2型糖尿病や肥満の人に加齢とともに起こる血管異常を治す方法があるという研究成果を裏付けるものです」とボストン医科大学院の血管生物学部のナオミ ハンブルク氏は語る。
今回の研究では、ボストン大学の研究者グループはまず、研究開始時に動脈硬化が認められた2型糖尿病患者57人の大動脈の硬化度を測定した。次に毎日100mgのレスベラトロールを2週間摂取してもらった。その後、300mgのレスベラトロールを2週間摂取してもらい、最後にプラセボ(偽薬)を4週間飲んでもらうという研究を実施した。
その結果、硬化度の高かった人は、300mgのレスベラトロールを摂取すると、動脈硬化が9.1%改善した。100mgの場合では4.8%改善し、プラシーボの場合では逆に増加したという。また、研究開始時に大動脈が硬化していなかった人には、こうした効果はみられなかった。

「レスベラトロール」が血管を柔軟にする

赤ワインエキス末を1日当たり400mg(レスベラトロールとして20mg)摂取し続けたグループで血管の柔らかさの指標であるFMD値が正常値まで上昇し、12週間の赤ワインエキス末の摂取で血管の柔らかさが改善した。
血流依存性血管拡張反応(FMD)検査は、カフで腕を締めた後の血流増大によるずり応力により、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)が血管内皮からどれだけ放出されたかを診る検査。管内皮機能が低下しているとNOの産生が少なくなり、FMD値は低下する。
試験ではレスベラトロールを含有する赤ワインエキス末を用いて1日当たり20mgの低用量レスベラトロール(被験食品群)と160mgのオリゴメリックプロアントシアニジン(プラセボ群)を健常人に12週間摂取させ、検査まで12時間以上のウォッシュアウトタイムを設け、血管柔軟性および脂質代謝に対する持続的な効果を評価した。
その結果、被験食品群とプラセボ群との間でFMD値の有意差(P=0.043)が認められ、血圧の降下傾向が示された。その被験食品群のFMD値は、5.1±2.3%から6.8±2.1%と、摂取前のFMD平均値は約30%増加し、正常値目安の6.0%を超える平均6.8%へ改善した。赤ワインエキス末による血管柔軟性の持続的な改善効果ならびに血圧の改善傾向が示された。脂質代謝に関しては、被験食品群においてわずかな皮下脂肪の増加抑制の傾向が認められた。

赤ワインのポリフェノール「レスベラトロール」の効果

フランス人は肉などの飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を多く摂取しているにもかかわらず、冠状動脈性心疾患の発症が少ないことは、「フレンチパラドックス」として知られる。そのカギとなるのは赤ワインに含まれるポリフェノール「レスベラトロール」で、1990年代には赤ワインブームが起き、2000年代にはレスベラトロールが長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化することが分かり注目を浴びた。
レスベラトロールに関しては、さまざまな研究がされているが、健常人で血管の健康効果を検証された例は少なく、また、血管の柔らかさについては、疾患者であっても瞬間的な効果だけで持続的な効果まで検証された例はなかった。

1杯のワインがあなたを魅力的に見せる

英国のブリストル大学のマーカス ムナホ教授(生物心理学)らは、学生40人を対象に実験を行った。参加者にワインを飲んでもらい顔の写真を撮った。
写真は、▽しらふのとき、▽ワインを1杯飲んだとき、▽2杯飲んだときの3回分けて撮影した。客観的に比較できるよう、撮影するときは無表情でいるよう求めた。

別の学生に写真を見せ、どれが魅力的に見えるかを尋ねた。結果は、もっとも魅力的に見えたのは「ワインを1杯飲んだとき」で、もっとも魅力的でないのは「ワインを2杯飲んだとき」だった。

「アルコールを飲むと、少量を飲んだ段階では、他人にとって魅力的に見えるようです。しかしそれは長く続かず、飲酒量が増えると魅力は失われます」と、ムナホ教授は言う。

なぜ少量のアルコールが人を魅力的に見せるのかは不明だが、「瞳孔が拡張し、筋肉が弛緩しリラックスして見えることや、頬がバラ色に染まり健康的に見えることが影響している可能性がある」という。

ただし、今回の研究は「アルコールが健康に良いことを示すものではない」と付け加えている。「アルコールを飲む過ぎると、見た目にも他人に悪い印象を与えるおそれがあることを肝に銘じた方が良いでしょう」と、ムナホ教授は説明している。

アルコールを飲むとコミュニケーションが円滑に進むことがあるが、今回の研究はその理由の一端を説明するものだとしている。

アルコールを適度に飲むとうつ病の発症が減少

この研究は、地中海ダイエットが心臓病を予防する効果を調べることを目的とした大規模研究「PREDIMED」の一環として行われた。PREDIMEDは、スペインの7地域で16の研究グループによって2003年に開始された。
研究チームは、55~80歳の男女5,505人を、平均7年間追跡して調査した。調査終了時点で443人がうつ病を発症した。

解析した結果、うつ病の発症がもっとも少なかったのは、アルコールを適度に飲んでいる人だったことが判明した。純アルコールに換算して1日に5~15gを飲んだ人では、まったく飲まない人に比べ、うつ病の発症が28%低下していた。

うつ病の予防効果の高いのはワインであることも分かった。ワインを週に2~7杯飲んでいた人では、うつ病の発症が32%低下していた。小さめのグラスのワイン1杯に、およそ9gの純アルコールが含まれる。

「適度な飲酒であれば、むしろうつ病の予防に効果があるという結果になりました。なぜそうなるのかは不明の点が多いのですが、適度な飲酒は動脈硬化を抑え、血管の炎症を予防する効果があるとみられます」と、スペインのナバラ大学のミゲル マルティネス ゴンザレス博士(予防医学、公衆衛生学)は話す。

赤ワインのポリフェノールが血管の健康を守る

フランス人は、飽和脂肪酸の多いチーズやバター、肉をたくさんとっているので、他国よりも心疾患の患者が多いと予想されるが、実際には他の欧州諸国よりも少ないことが知られている。これは「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」と呼ばれている。
その要因は、フランス人は毎日の食事とともに赤ワインを飲んでいることだ。赤ワインを適度に飲むと、血管や体の老化を防ぎ、高血圧や動脈硬化の予防に役立つとされている。

なぜ赤ワインが体によいのか。その謎は最近になって解明された。それは、赤ワインに含まれるポリフェノールの作用だ。ポリフェノールは、加齢による血管の内皮機能と運動能力の低下を遅らせる。

赤ワインにはアルコールが含まれる。アルコールは血圧を下げる作用を、むしろ邪魔しているようだ。赤ワインよりも、ノンアルコール赤ワインを飲んだ方が、血圧降下作用は大きいという。

スペイン・バルセロナ大学の研究では、糖尿病または心臓血管リスクを3つ以上もつ男性67人を対象に、全員が共通の食事をとることに加え、毎日赤ワイン283g(10オンス)、ノンアルコール赤ワイン283g(10オンス)、ジン85g(3オンス)のいずれかを4週間飲み続けてもらった。

次に飲み物の種類を変え、最終的に全員が3種類全ての飲み物を4週ずつ飲むようにした。なお、赤ワイン、ノンアルコール赤ワインはいずれも同量のポリフェノールと酸化防止剤を含有するようにした。

その結果、赤ワインを飲んだ場合の血圧降下の度合いは小さく、ジンでは変化がなかった。一方で、ノンアルコールの赤ワインでは収縮期血圧が6mmHg、拡張期血圧が2mmHg低下していた。これにより、心臓病リスクを14%、脳卒中リスクを20%低下するという。

ノンアルコールの赤ワインに含まれるポリフェノールは酸化ストレスを低減して、内皮型一酸化窒素を増やして血管の弛緩を助け、より多くの血液が心臓などの臓器に運べるようにする働きがある。

「ポリフェノールには、加齢による血管の内皮機能不全と身体機能の低下を防ぐ効果がある。収縮期および拡張期の血圧を低下させるのにも役立つようだ」と研究者は述べている。

赤ワインに含まれるアルコールは、血圧降下の妨げとなるようだが、ポリフェノールはノンアルコールワインにも含まれている。ノンアルコールの赤ワインを飲むことを習慣化すると有益ではないか、と研究者は結んでいる。

ワインを飲むと体調子が悪くなる

ワインを飲むと、頭痛や胃痛、ぜんそくを起こしたりすく方がいます。実は、ワインなどの醸造酒には、作る過程での殺菌効果や酸化を防ぐための酸化防止剤として亜硫酸塩が配合されています。そして、そこから発生する亜硫酸ガスが、頭痛や胃痛、ぜんそくを起こすもとになっているのです。もちろん、すべての人に、このような症状が起こるわけではなく、ごくまれに亜硫酸ガスに対する感受性の強い人だけが反応してしまうことがあります。

亜硫酸ガスと聞くと体に悪いイメージを感じてしまいそうですが、ワインには抜群の健康効果があるのを知っていますか?「毎日飲んでも大丈夫?赤ワインの効果とは」で詳しく書いていますが、ワインには女性にとってはうれしい効果がいっぱいあります。

一方、ごくまれですが、アルコールに対するアレルギーを持っている人もいます。アルコールが肝臓で代謝されてできる物質が気管支粘膜の毛細血管を刺激し、ぜんそくを誘発するというもので、「アルコール誘発ぜんそく」と呼ばれています。ただし、この場合はワインだけでなく、アルコールすべてに同じ反応を示します。