夕食前の楽しみ「アペロ」

フランスには「アペロ」という習慣があるのをご存知ですか?

夕方過ぎになると、よく仕事帰りのパリジャンたちが、ワインボトルを持って歩いている姿を見かけることがあります。彼らは、友人や恋人たちと「アペロ」の待ち合わせに向かっているのです。

アペロとは「Apéritif(アペリティフ)」という言葉の略で、日本語では「食前の一杯」といったところ。夕食前にお酒を一杯飲みながら、オリーブやスナックなどのおつまみを食べ、気心知れた仲間同士で楽しくおしゃべりをするのです。

集まる場所は、お店や自宅など様々ですが、だんだんと暖かい季節になってくると、夜遅くまで照る太陽の光を浴びながら、セーヌ川の川辺でアペロを楽しむ人が増えてきます。

みなワインを楽しむ傍らで、ある若者はギターを弾き、カップルは人目をはばからずキスに夢中になり、ご老人はただパリの景色を眺め、思い思いの夕方を過ごしています。

アペロは、フランス人の生活に欠かせない、ワインの楽しみ方の定番のひとつなのです。

ワインは戦国大名にも愛された

日本の文献によると、日本でワインが初めて登場しているのは室町時代です。
その当時の文書である「後法興院記」によると、「珍蛇(チンタ)」というお酒を飲んだという記録があります。
この、珍蛇はスペインやポルトガルから伝わったワインのことであると考えることができ、この頃からワインが嗜まれていたと考えることができるのです。

世間一般的に流通をしていくとされているのは、1549年にイエズス会の宣教師であるフランシスコ・ザビエルがキリスト教布教のために鹿児島を訪れた際、布教した地域の大名にワインを献上したことであると言われています。
そのあと、ペリーが来航したときにも日本にワインを献上したとされており、そこからワインが世間へと浸透していくのです。

日本のワインには害奥ではない内容量

一般的にワインのボトルというのは1本あたりに750ミリリトトル入っています。
これは、フランスで有名なボルドーやブルゴーニュのようなワインも特徴あるボトルの長細いアルザスでも750ミリリットルです。
しかし、日本のワインの中には720mlという容量のワインがあります。

このワインの量が半端なのには、日本のワイン作りの歴史と関係があります。
日本でアルコールを計測する単位は1合が180ミリリットルであり、日本酒の4合である720ミリリットルで一升瓶を作っていました。
この一升瓶にワインを入れて製造していたので日本には720ミリリットルという半端な容量のワインがあるのです。

これは、日本で製造されているワインならではの特徴です。
そのため、国産ワインを購入するときには720ミリリットルのものを見つけると古くから製造がされているワインの目印になります。

ワインに含まれている栄養素

ワインには、ブドウに含まれている栄養成分のほぼ全てをワインの中に取り込んでいますから、多くのミネラル・ビタミン・ポリフェノールなどが含まれています。
これらの栄養素は、通常、食品で摂取する場合には食品に含まれている量の30~40%しか吸収されませんが、ワインで摂取する場合はこれらの栄養素の100%が体に吸収されると言われています。
このことから、ワインには抗酸化作用・血圧降下・抗ガン作用・殺菌作用など多くの効果が期待されるのです。

たとえば、動脈硬化やガンの予防になるといわれている赤ワインに多量に含まれているポリフェノールの効果は、ポリフェノール含有量の多い野菜に比較して20倍以上もあります。
また、ワインに多く含まれているカリウムは、体内のナトリウムと結合することで塩分を減少させることから、高血圧予防に役立ちます。
グラス約1杯飲むだけで、通常の血圧に対して10 mmHg程度低下させます。
ワインを飲んでも血圧は上がることはなく、むしろ下がっていきます。

特にビンテージものなど長期貯蔵ワインの場合は分子の高分子化が進み、高級アミノ酸が発生しています(高級アミノ酸は糖尿病予防に効果があると言われています)。
この高級アミノ酸はポリフェノールと同じ働きと効果があると言われますから、高級ワインを少しずつ飲むのが理想的な飲み方と言えるでしょう。

ワインとチーズ

ワインと一緒に摂取するといいものとして一般的に言われるのは、「チーズ」です。
チーズのメチオニンという成分が、アルコールの摂取で疲れた肝臓の働きを助けてくれる効果を期待できるのです。
小魚に含まれるカルシウムはその30%程度、野菜などに含まれるカルシウムは17%程度しか吸収できません。
しかし、チーズに含まれるカルシウムは、50~60%が体内に吸収されます。

ワインなどの摂取による血液アルコールを中和する働きがあるのはカルシウムであり、チーズにはこのカルシウムが多量に含まれているのです。
チーズ以外でワインと一緒に摂取するといいと言われるのは、ビタミンB1・タンパク質・抗酸化成分を含んだ食品です。

ビタミンB1を含む食品には、アルコールの代謝を高め・促進する作用があります。
具体的には豚肉、小麦胚芽、大豆、ひまわりの種、乾海苔などです。
たんぱく質を含む食品は、肝臓を守る働きがありますからワインと一緒に摂取するとアルコールの害を予防できます。
具体的には不飽和脂肪酸が豊富な魚、卵、牛乳や乳製品などです。

抗酸化成分を含む食品をワインと一緒に摂取すると、ポリフェノールの効果がより高められます。
抗酸化成分の水溶性のものにはビタミンCがあり、野菜や果物に多く含まれています。
また、抗酸化成分の脂溶性のものには、ビタミンEとカロチンがあります。
ビタミンEは植物油、穀類、豆類、動物性食品などに含まれていますし、カロチンは緑黄色野菜に多く含まれています。
こうした食品をワインと一緒に上手に摂取して、ワインを健康的に楽しんでください。

 

カチ割りワイン

「カチ割り」とは、いわゆる「ロック」。大きめのグラスにロックの氷を入れ、冷やしていない手ごろな価格の赤ワインを注ぎます。 ぶどうの品種はメルロかカベルネ・ソーヴィニヨンがいいでしょう。
ワインの赤色と氷が輝き、素敵なグラデーションがとてもきれいです。
赤ワインの果実感をスッキリとした口当たりで楽しめますので、お好み焼や焼き鳥など気楽な食事によく合いますし、夏の暑い日などには最高です。

「そんな飲み方は邪道!」と思われる方もおありでしょうが、意外にとてもおいしいので、一度試してみてください。

ドイツに行った時、現地の人に聞いた話なのですが、実はこの飲み方のルーツは、ナポレオンらしいのです。

ナポレオン ナポレオンは「シャンベルタン」というブルゴーニュの特級畑のワインがお気に入りで、進軍のときはいつも「シャンベルタン」を用意していました。
あまりお酒が強くなかったナポレオンは行く先々でワインを水で割って飲んでいたと言われています。
ドイツのフランケン地方に進軍した時、若い女性がワインの入ったグラスをナポレオンに差し出しました。
ナポレオンはそのワインを泉の水で割って飲み「Toujour sl’amourトゥジュール・ラムール(愛よ永遠に)」と言いました。
ワインを渡してくれた女性が美しかったら言ったのか実際の所は解りませんが、フランケンの人々はフランス語が理解できなかったため、独語的に「リスーレ・ムーレ」と聞こえ、女性のことではなくワインを水で割った飲み物のことを「リスーレ・ムーレ」と呼ぶのだと思ったようです。
この言葉が徐々に「ショーレ・モーレ」に変化していき、今でもドイツでは昼食の時などワインを水やソーダで割って飲むことを「ショーレ」と呼んでいます。

この話を聞いて、30年ほど前に、「焼鳥屋」を始めるという友人からお店で提供する飲み物の相談を受けた時、お客様に気軽にワインを飲んでもらおうと水の代わりに氷を入れる「カチ割りワイン」を考案しました。
邪道などと言わず、気軽に楽しめる「カチ割りワイン」を是非お試しください。

ワインはなぜ横に寝かせるの?

ワインを横に寝かせて保管するのは、ボトルに使用しているコルク栓を湿らせることで空気が入ってワインが酸化するのを防ぐためです。
湿ったコルクは水をほとんど通さないことで香りや味わいが劣化することを防いでくれますし、ワインを熟成させるのに役立つ適度な空気を通して適切に熟成と酸化防止を行ってくれるのです。
こうしたことから、ワインのボトルにはコルクの栓が使用されてきました。

この栓に使われているコルクは乾燥すると収縮して弾力性を失って硬くなり、隙間が出来てしまいます。
そうなるとコルクは必要以上に空気を通しやすくなり、ワインの酸化を早めてしまうのです。
また、隙間から有害な微生物がボトルの中に侵入する可能性もでてきます。
さらに、コルクが乾燥するとコルクスクリューを差し込んだ時に崩れやすくなったりボトル内に入り込んだりします。
とくに長期保存するときは、ワインがコルクに常に触れているように、必ず横に寝かせることが必要です。

近年、コルク栓を使用していない合成コルクやスクリューキャップを使用したワインも多数市販されています。
こうしたワインについては、横に寝かせておく必要はありません。
しかし、基本的にはワインにできるかぎり振動を与えないで安定した状態で保管することは必要です。

ワインセラー必要

ワインセラー(wine cellar)とは、ワインの貯蔵施設です。
熟成させるために適切な温度・湿度を保てる地下などの貯蔵室や、同様の条件で光や振動を避けて保管することができる貯蔵庫のことを言います。

ワインの本場であるヨーロッパでは、昔から、ケイヴ(Cave)と呼ばれる洞穴や地下をワインセラーとしてそこに保管してきました。
ワインは湿ったコルク栓にわずかに瓶内のワインをにじませ、アルコール分や水分とともに熟成生成物を瓶外に発散させながら遮光された静かな場所で熟成します。
熟成には、温度が13~15℃くらいで湿度は70~80%、さらに光や音・振動の影響を受けることなく保管されるのが理想です。
こうした条件を満たすのが、かつてはケイヴであったということであり、現在、ケイヴに近い環境を作り出すのがワインセラーなのです。

日本は四季がある関係で、ワインの保管には適した環境ではありません。
30℃以上の高温が続くと熟成が進みすぎて変質・劣化を起こしますし、5℃以下の低温が続くと熟成が進まなくなります。
また、蛍光灯の光でも色や味の劣化の原因になりますし、地震は言うに及ばず乗り物などによる振動や衝撃はボトル内に対流を生じさせ、熟成を妨げます。
ワインセラーは、こうした悪条件からワインを守ってくれるのです。

ワインの値段

ワインの価格はピンキリで、スーパーマーケットの棚に並べられるような数百円の安価なものがあれば、専門店のワインセラーで保管されていて数十万円・数百万円もするようなものもあります。
こうした価格の違いは、なぜ発生するのでしょうか。

ワインを製造するために必要なコストは、ブドウの栽培や用地の維持管理に必要な人件費・瓶やコルクなどの物件費・ボトリングや商品の維持管理費、輸送費といったものです。
こうしたコストの上に一定の利益を上乗せしてワインの価格が決定されます。
これらのコストは、大企業によって安い労働力で大量生産されているようなものと、個人経営で手間暇をかけてぶどうを栽培して製品化されたものでは違いがあることは容易に理解できますが、そのことで価格に何百倍もの差が発生するとは考えられません。
こうしてみると、ワインの値段は一般に市販されている他の商品とは違い、単にコストや利益率だけで決定されているのでないことがわかります。

ワインの価格は「造り手の知名度や人気」「造られた年(ヴィンテージ)」「需要と供給のバランスや希少価値」の3点で決定されると言えるようです。
どこのワイナリーで誰が造ったワインか、何年に造られたワインか、希少価値のあるワインか、といったことで価格が決定されるのです。
さらに、鑑定家のお墨付きや愛好家の人気が出たりすることで価格はどんどん上がります。

フランスのワイン法

フランスのワイン法は、1923年に、現在の原型が生まれました。1935年に、A.O.C.(原産地統制名称法)でぶどうの種類・醸造法・原産地を法律で細かく制定しました。これが以降の各国のワイン法の見本となりました。A.O.C.(appellation d’origine controlee) アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ 原産地呼称統制ワインA.O.V.D.Q.S.(vin delimites de qualite superieure)原産地名称上質指定ワイン 生産量がごくわずかです。Vin de Pays ヴァン・ド・ペイ 地酒 お手頃で高品質な物もあります。Vin de Table ヴァン・ド・ターブル 日常用テーブルワイン ネゴシアンによるブレンドワインなどお手頃の物があります。 ブルゴーニュでは、畑の格付けがあり、1級畑AOC、特級畑AOCなどがあります。